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労働 企業法務

マイカー通勤と会社のリスク②

弁護士 小島梓

 前回のコラムではマイカー通勤を会社として認めた場合、会社に発生しうるリスクをご説明し、当該リスクを踏まえたうえで、マイカー通勤を認めるか否かご判断をというお話をいたしました(「マイカー通勤と会社のリスク①」もご参照ください)。
 では、マイカー通勤については、就業規則で禁止しているが、申請せずにマイカー通勤をしている社員がおり、さらに、その社員が無断で取引先への移動の折にマイカーを使用した上、人身事故を起こしてしまったという場合、会社に発生しうるリスクはあるのでしょうか。

 前回の「マイカー通勤と会社のリスク①」において、会社に発生しうる責任として使用者責任と運行供用者の責任というのもがあるということをご説明しました。
 しかし、前回の設例とは異なり、本件では会社はマイカー通勤、業務でのマイカー利用を禁止しています。そうなりますと、会社の責任は否定される可能性が高いと言えます。具体的には、会社との関係では事業を執行する過程にないことなどから使用者責任は否定され、会社の把握できていないところで、勝手に従業員が使用していたということになるので監督できる立場にもなく運行供用者とも言えず運行供用者の責任も否定される可能性が高いためです。

 しかし、実際に判断する場合には実態を見られます。すなわち、如何に、形式的に就業規則上でマイカー利用を禁止していたとしても、実際には、マイカー通勤やその利用が長期間、続いており、会社は黙認していたと言えるような場合には、会社の責任が問われることはあり得ます。

 会社では日々色々な問題が起こるため、実害が出ていない段階では、処理が後手に回ることも多いです。マイカー通勤や利用に関しても、「本当はダメだから、注意してやめさせないと…」と思っているうちに時間が経過してしまったということはよくあります。しかし、上記のように、曖昧な状態にした結果、会社が思わぬ責任を問われるということになりかねません。

 マイカー通勤や利用の問題のみならず、就業規則違反が判明した場合には、会社から社員に対して適時適切に注意指導をする、場合によっては懲戒処分を実行する等確実に対応してくことが重要です。

 次回は、マイカー通勤や利用に関する会社のリスク回避のための対策などをご紹介します。