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労働 企業法務

許可していないマイカー通勤により起こした交通事故と通勤災害③

弁護士 小島梓

 就業規則にて、マイカー通勤が禁止されている場合でも、マイカー通勤途中の事故が通勤災害に該当する場合はある旨は前回のコラムにてご説明しました(許可していないマイカー通勤により起こした交通事故と通勤災害②)。
 仮に、実際に社員が会社に黙ってマイカー通勤をして途中で交通事故に遭ってしまった場合、通勤災害に当たるとしても、就業規則違反をしていたことは事実です。この場合、会社としてどのように対応すべきでしょうか。

 就業規則にマイカー通勤を禁止する規定がある場合には、当該規定に違反したことを理由として、違反した社員に対して、注意指導を口頭や書面で行うことが考えられます。過去にも違反行為があった、反省の態度が見られない、違反した期間が長いなどの事情が認められる場合には、懲戒処分を検討する必要もあるかと思います。懲戒処分と言っても譴責処分、出勤停止、減給など種類は様々です。違反の程度によって慎重に判断する必要があります。
 また、このように、違反者に対して会社が何らかの対応をとることは、他の社員に改めて就業規則遵守の重要性を示すことにもなりますし、特別扱いはしないという会社の姿勢により他の社員が不公平を感じることもなくなるという意味でも重要です。

 さらに、仮に、該当社員に対して、会社から電車通勤等を前提として定期代相当額を支給していた利する場合は、虚偽の申告により交通費を不正に受給していたということになりえます。仮に該当社員が毎日マイカー通勤をしていて、実際には、定期を購入していなかったというような場合には定期代相当額の返還を求めることも検討する必要があります。

 マイカー通勤に関しては通勤災害以外にも様々な問題が起こり得ます。会社にリスクもあるところですので、次回より、マイカー通勤に係る会社のリスクや予防策をコラムでご紹介したいと思います。