columnコラム

債権

債権回収 支払督促②

弁護士 長島功

 今回は,支払督促を利用できる条件について,ご説明しようと思います。

①金銭等の請求を目的とする請求であること
 民事訴訟法382条本文では,支払督促が利用できる場面として,「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」であることが求められています。
 ですので,金銭債権の回収の場面では,この条件は当然に満たすため,特に問題になることはないと思います。
 金銭債権の発生原因は特に問われませんので,例えば売買代金の回収の場面でも,貸したお金の回収や,請負代金の回収の場面でも,金銭請求であれば,支払督促を利用することは可能です。

②債務者に,日本国内で公示送達によらずに送達できること
 民事訴訟法382条ただし書に記載がある条件です。
 支払督促は,債務者の関与なしに,債権者の求めに応じて,証拠も添付することなく進む手続です。そのため,債務者が一定期間内に異議を出せば,通常の裁判に移るのですが,前提として,支払督促が発付されたことを債務者が知らなければ,異議を出すこともできません。そこで,送達,つまり債務者に支払督促発付の事実を通知する方法は,できるだけ確実にすることが望ましいです。
 公示送達というのは,債務者の住所等が不明の場合に,最後の手段として,裁判所の掲示板などに一定期間掲示することで,債務者に通知を送ったことにしてしまうものです。他の手続では利用されることもあるのですが,これを支払督促でも認めてしまうことは,債務者の異義の機会を確保するという手続保障の点から望ましくないということで,この条件が定められています。
 したがって,債務者の住所など,送達場所が不明の場合は,支払督促を利用することは難しいです。
 ただ,仮にそのような場合でも,調査をすることが可能なケースもあるので,もしお困りの方は一度弁護士にご相談されることをお勧めします。