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労働 企業法務

入社前研修の賃金について①

弁護士 小島梓

 採用予定者(内定者)を集めて、入社前研修を行う会社は非常に多いです。その内容は、会社によって様々で、同期の親交を深める目的で行われる山登りのようなものであったり、研修所に入って本格的に業務に関する勉強をしたりするものであったりします。
 会社が主催して行うものであるため、顧問先からはこの入社前研修に絡んだ法的な問題につき質問を受けることも多いです。
 そこで、本コラムにおいて、入社前研修に関連してよく問題となる点について解説していきたいと思います。

 まず、この入社前研修参加者に対して、会社は賃金を支払う必要があるのでしょうか?
 結論から申し上げますと、場合によります。以下、判断基準を簡単にご説明していきます。

 会社と内定者との間で、入社前研修に参加するにあたり、個別の契約を締結していた場合や就業規則上入社前研修における賃金や日当の発生の取り決めがなされている場合には、当該内容にしたがって賃金(もしくは日当など)の支払いをする必要があります。
 そのため、就業規則に取り決めがなく、個別の契約も締結していないという場合は、基本的に賃金を支払う必要はないと言えるのですが、事情によっては賃金を支払う必要が生じる場合もあるため注意が必要です。

 法律によって、「労働者」(労働基準法9条)に該当する場合には、最低賃金以上の金額を支払う必要があることになっています(最低賃金法2条1号、同法4条1項)。すなわち、内定前研修の内容により、それが「労働」と言える場合には、取り決め等がない場合でも賃金を支払う必要があるということになります。

 次回のコラムでは、「労働」に該当するか否かの判断基準等を簡単にご紹介します。