columnコラム

裁判例 相続

相続の対象-相続財産、一身専属的な権利義務、祭祀に関する権利、遺骨等

弁護士 幡野真弥

■相続財産とは
 民法896条本文は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。
 そこで、相続では、被相続人に属していた様々な権利や義務が、一括して、全体として相続人に承継されることになります。
 もっとも、民法896条但書きは、「被相続人の一身に専属したもの(一身専属的な権利義務)」は、権利義務の承継の対象外としています。
 また、祭祀に関する権利(897条)は相続とは異なるルールで祭祀主宰者に承継されます。
 したがって、「相続財産」とは、被相続人の財産に属していたすべての権利義務のうち、一身専属的な権利義務と、祭祀に関する権利を除いたものになります。

■一身専属的な権利義務とは
 一身専属的な権利義務とは、被相続人の人格や身分に強く結びついた権利義務です。
民法上、明文の規定があるものとしては、
・代理における本人と代理人の地位(111条1項)
・委任における委任者と本人の地位(653条)
・使用貸借契約における借主の地位(597条3項)
・雇用契約上の地位(625条)
・組合員の地位(679条)
・配偶者居住権(1036条、597条3項)
・配偶者短期居住権(1041条、597条3項)
などがあります。
 明文の規定がないものとしては、
・婚姻費用分担請求権、扶養請求権
・生活保護法に基づく保護受給権
・一定額の請求権として具体化する前の、離婚に伴う財産分与請求権
・身元保証契約上の責任(大判昭和18年9月10日)
・公営住宅の使用権(最判平成2年10月18日)
などがあります。

■祭祀に関する権利
 墓地、仏具、位牌などの祭祀に関する権利については、相続財産とは別の承継のルールが定められています。
 民法897条は、①被相続人の指定、②その地方の慣習、③家庭裁判所による判断、という順位で祭祀主宰者が決定されると定めています。
 遺体や遺骨は、祭祀に関する権利ではありませんが、判例は、民法897条を準用して、慣習上の祭祀主宰者に遺骨が帰属するとしています(最判平成元年7月18日)。