columnコラム

相続

相続における預貯金②

弁護士 長島功

 前回のコラムで,夫(被相続人)が亡くなり,残された妻(相続人)が夫名義の預貯金を,生活費等のために急ぎ引き出したいというケースについてお話しました。残された相続人のために,このようなケースをカバーするものとして,平成30年の相続法改正によって,新たに2つの制度ができました。
 ①裁判所の手続による仮処分
 ②遺産分割前の預貯金債権の事実上の払い出し
 です。
 今回は,①の裁判所の手続を利用する方法について,お話したいと思います。

 この制度は家事事件手続法200条3項に規定があります。
 遺産分割の審判または調停の申立てがなされている必要はあるのですが,相続人の生活費の支弁等の事情により,預貯金債権を行使する必要があれば,遺産に属する特定の預貯金債権の全部または一部をその者に仮に取得させることができるというものです(ただし,他の共同相続人の利益を害さないことが必要です)。
 具体的には,裁判所が仮の取得を認める場合,それを認める仮処分命令が書面で出ますので,それを金融機関に提示して,預貯金の払い出しを受けることになります。

 この制度により,遺産分割で揉めている場合であっても,遺産分割の結論が出る前に,裁判所の判断で預貯金が引き出せるようになります。
 ただし,あくまで裁判所の手続であることから,通常の事件よりは迅速に判断はなされるものの,申立ての準備等も含めますと,1か月~場合によっては数か月の時間がかかる可能性があります。

 そのため,より迅速な引き出しを可能にするものとして,②の制度がありますが,この制度については,また次回ご説明しようと思います。