columnコラム

獣医師

オーナー様とのトラブル②~クレーム対応(1)~

弁護士 小島梓

 オーナー様から獣医師による処置等に関してクレームが発生してしまった場合,通常は,まず担当した獣医師もしくは院長等の責任者より,オーナー様の疑問に答えるべく,必要な説明を行っていただいているかと思います。獣医師には自身で行った処置について説明義務(「獣医師の説明義務について」のコラムもご参照ください)があるという観点からも,まずは処置に関して必要かつ可能な説明を尽くすということは必須となります。

 ただし,責任感のある獣医師の先生程,この説明を行う段階で,大変な苦労をされたり,ご自身で長期間対応されたことにより,返って混乱が生じたりするケースも多くみられます。
 そこで,今回は,どこまでご自身による対応を頂くのが良いのか,長期間による対応は必ずしもお勧めできない理由をご説明したいと思います。

 可愛がっていたペットが亡くなってしまった場合など,オーナー様は,大変な悲しみを抱えておられます。その結果,どうしても悲しみや怒りの矛先を目の前にいる獣医師に向けやすい状況となり,クレームという形で表れてくるケースは非常に多いです。

 このような場合,獣医師が誠意をもって丁寧に説明を尽くすことでご納得いたければそれで良いのですが,オーナー様の中には,獣医師や病院スタッフに繰り返し攻撃的なこと言う,何度説明をしても理解せず長時間の対応が必要になる,他のオーナー様もいる前で大声でスタッフを罵倒する,病院で暴れるといったケースも見受けられます。

 最近では,獣医師に対して,オーナー様が金銭請求を行うわけでも,謝罪を求めるわけでもなく,ただひたすら書面やメール等により質問を続けるというケースも見られます。
 内容は従前と同じものだったり,治療とはほとんど関係ないものだったりと様々ですが,特徴的なことは質問に対する回答をしても終わりがこないということです。
 獣医師側としては治療に全く関係ないわけでもない質問であること,怒鳴られたりするわけではなくただ質問が続いているだけという状況もあり,辛くてもご自身で何とか回答を続けようと頑張ってしまわれるのですが,従前の回答と違う回答をしたりして混乱も生じ始めます。

 まず,このようなオーナー様に繰り返し,獣医師の先生ご自身で対応することは相当な負担です。特に,感情的になっているオーナー様への対応は,精神的にも非常に辛く,その中で日々の診療を続けることは,それこそ医療ミスにつながりかねません。
 また,オーナー様からの電話等を最初に受けるスタッフも,対応に慣れている方は少ないでしょうから,疲弊してしまい,最悪,退職してしまうということにもなりかねません。

 このような事態にならないためにも,長期間にわたってご自身で対応することはお勧めいたしません。
 一つの目安として,一度,獣医師より,一定の時間をかけて,オーナー様の疑問にお応えすべく,丁寧且つ必要な説明をする場を設けたり,説明の書面を送付したにもかかわらず,納得されず,オーナー様が上記のような各種対応に出る事態になった場合には,そのまま獣医師やスタッフによる直接対応を継続するのではなく,一旦,ご相談いただければと思います。
 当方で,個別の案件に応じて,もう少しそのまま対応いただいた方がよいか,すぐに介入すべき案件かのアドバイスをさせていただくようにいたします。

 次回は,オーナー様からのクレームに対して,ご自身で対応する中で,謝罪や金銭の支払いなどに関して気を付けていただきたいことをご説明したいと思います。