columnコラム

相続

相続法改正 遺留分制度②

弁護士 長島功

 遺留分の算定方法についても,相続法改正により見直しがありましたので,順次ご紹介していこうと思います。

 設例を用いた方が分かりやすいかと思いますので,以下の事例を用いてご説明しようと思います。
 被相続人が亡くなり,相続人として,子2人(甲,乙)がいます。
 相続財産として,めぼしいものは殆どありませんでしたが,甲は被相続人が亡くなる12年前に結婚資金として300万円(贈与A),同じく亡くなる5年前に自宅購入資金として100万円(贈与B)の贈与を受けていました。この場合,何も生前贈与を受けていない乙は,甲に対し,何も請求できないのでしょうか?

 こういったケースでも遺留分が問題になります。
 遺留分を計算する際の基礎となる財産は,相続時の被相続人の財産だけではありません。生前の贈与も対象となるため,設例のように相続時にめぼしい財産がなかったとしても,設例のような生前贈与がある場合にはそれを計算に含めることで遺留分が認められるケースがあります。
 そして,どの範囲の生前贈与を計算に含めるかについて,この度の相続法改正で修正がなされました。従前は相続人以外の第三者への生前贈与については,相続開始前1年間にされたものに限定されていましたが,相続人への特別受益に該当するような生前贈与は,相続開始前1年間に制限されることなく,遺留分算定の基礎にされていました。そのため,先の設例によれば,贈与ABともに算定の基礎となりますので,

(300万+100万)✕1/2(遺留分率)✕1/2(法定相続分率)=100万円

 を乙は甲に遺留分侵害額として請求できます。
 もっとも,このルールによると,何年も前の生前贈与にまでさかのぼることになるため,紛争が長期化・複雑化しやすいという指摘がありました。
 そこで,今回の改正で,原則として相続人への特別受益となるような生前贈与については,相続開始前10年間になされたものに限り,遺留分算定の基礎とすることになりました(民法1044条3項)。
 その結果,改正後は,贈与Aを遺留分算定の基礎に入れることは原則できなくなりますので(例外的に入れられる場合もありますが,今回は割愛します),

 100万✕1/2(遺留分率)✕1/2(法定相続分率)=25万円 

 を乙は甲に遺留分侵害額として請求できるにとどまることになります。
 このように,改正で遺留分算定の基礎に入れることができる生前贈与を時的に制限したことにより,遺留分に関する紛争の複雑化・長期化が緩和されていくものと思います。