columnコラム

裁判例 獣医師

トリミングで飼い猫の尻尾の一部を切断した場合の法的責任

弁護士 幡野真弥

 動物病院のなかには,ペットの治療だけでなく,トリミングも行っているところも多くいらっしゃると思います。

 それでは,トリミングの最中に事故が発生してしまった場合,法的にはどのような責任が発生するのでしょうか。

 東京地裁平成24年 7月26日判決は,猫のトリミングの最中に,誤って尻尾の一部を切断してしまった事件です。

 この事件では,ペットオーナーは,治療費のほか,猫の財産的損害,慰謝料等を請求しました。

 裁判所は,ペットオーナーが,猫を「子供のように思って育ててきたと主張しているのであるから,第三者に売却する意思などなかったことが明らか」であり,猫が事故当時,9歳7ヶ月と高齢であり,財産的価値を算出することは困難」とし,「大切な身体の一部が永久に損なわれた損害は慰謝料の中に含めて填補されるのが相当である。」と判断しました。
 例えば,高価な時計が損壊した場合は,その時計の時価が財産的損害となりますが,今回の事例では,裁判所は財産的損害を認めませんでした。

 慰謝料については,「ペットは法的には物であるが,生命のない動産とは異なり,飼い主との間で互いに愛情を育む関係が生まれるのであり,人と人との関係に近い関係が期待されるものであるから,原告らの精神的・肉体的苦痛は軽視することができない」とした上で,猫の傷の程度や年齢,トリミング事業者側の過失の内容等に照らして,猫の治療等で最も疲弊した原告につき4万円、その余の原告らにつき各2万円の慰謝料を認めて,原告ら全員分として合計10万円の慰謝料を認めました。

 トリミング中に事故が起きてしまった場合の損害の算定方法として,この裁判例は参考になると思われます。