columnコラム

相続

相続法改正 配偶者の居住権②

弁護士 長島功

 前回に引き続き,今回も配偶者の居住権を保護する制度についてご説明しようと思います。
 前回は,遺言等によって,直ちに自宅をでなければならない事態にならないよう,短期的に配偶者の居住権を確保する制度をご紹介しましたが,今回は遺産分割や,遺贈・死因贈与で,残された配偶者に無償でその居住していた建物を使用・収益できる権利(以下,「長期居住権」と言います)を取得させることができるようになりましたので,ご紹介していきます。

 今回の改正で認められた長期居住権は,例えば,夫が亡くなった際,夫名義の自宅に妻が居住していた場合,遺産の分割等によって,妻が無償でその自宅に居住できる権利を取得できるものです(民法1028条1項/以下,民法は省略)。原則として妻が亡くなるまで終身存続します(1030条)。
 

 このような権利ができた背景ですが,これまでは,妻が長年住み慣れた夫名義の自宅に,夫が亡くなった後も住み続けるには,
 ①妻が自宅の所有権を相続する
 ②自宅を相続した他の相続人から借りる
といったことが必要でした。
 しかし,①の場合,遺産の内容如何では不都合が生じました。例えば自宅の所有権を相続することで,法定相続分(2分の1)に相当するものを相続してしまい,他の預金などを十分に相続できなかったり,よりひどい場合は,自宅の所有権を相続したことにより,法定相続分を超える相続をした結果,他の相続人に代償金を支払わなければならないといった事態があり得ました。つまり,長年住み慣れた自宅を相続したいが,それをすることによって,現預金が相続できなかったり,逆にお金を支払わなければならないケースがありました。ただ,これでは自宅を相続したばかりに,その後の生活に支障が生じてしまい,結局自宅を相続することをあきらめざるを得ないケースがでてきます。
 また,②の場合でも,無償で借りられれば良いですが,賃貸借契約であれば,賃料が発生してしまい,残された妻が高齢で,十分な収入がなければこの方法もあまり現実的ではなくなります。

 そこで一定の要件を満たす必要はありますが,遺産分割や遺贈等で,残された配偶者に,原則として終身,無償で自宅に居住できる権利(長期居住権)を付与できるようになりました。
 これにより,①については,自宅の「所有権」ではなく,長期居住権という,一般的により価値の低い,利用権の取得にとどめることができるので,相続開始後も,自宅に居住しながらも,他の預貯金も相続するという柔軟な分割が可能になります。
 また,②に関しても,この長期居住権は,無償で居住できる権利なので,その権利を遺産分割や遺贈で残された配偶者に取得させることで,残された配偶者の生活も維持しながら居住も確保することができるようになります。

 相続では,残された配偶者のその後の生活に配慮する必要がありますが,今回の相続法改正で認められた長期居住権は,その実現に役立つものです。ご検討の際は,是非一度ご相談ください。