columnコラム

相続

相続法改正 配偶者の居住権①

弁護士 長島功

 相続法の改正により,配偶者を保護する制度がいくつか定められました。
 そこで,まずは配偶者の居住権を保護する制度について,2回に分けて,お話していこうと思います。
 今回は,「配偶者短期居住権」というものについて,ご説明します。

 配偶者の一方(被相続人)が亡くなった場合,被相続人が所有する自宅に同居をしていた他方配偶者は,そのまま自宅に継続して住むことを希望するのが通常かと思います。そのため判例は,特段の事情がない限りは,被相続人と他方配偶者との間で,遺産分割により誰が自宅を相続するかが決まるまで,使用貸借契約,つまり無償で自宅に住む合意があったと推認するという形で,遺産分割が終了するまでの他方配偶者の短期的な居住権を保護してきました。
 ただし,これはあくまで当事者の意思を推認するだけですので,被相続人が明確に違う意思を示して亡くなった場合には,この判例の理論で残された配偶者の居住権を保護することができません。例えば夫が亡くなった際,夫婦で同居していた自宅を,遺言で愛人等の第三者に遺贈するとしているような場合には,妻に無償で住まわせる合意があったと推認することは困難ですので,第三者から退去を求められれば,残された妻はすぐに退去せざるを得ませんでした。

 そこで,この度の改正で配偶者短期居住権の規定が創設されました(民法1037条1項)。
 具体的には,被相続人の財産に属していた建物に,相続開始時に生存配偶者が無償で居住していた場合には,相続開始後も,一定期間無償で生存配偶者はその建物に居住できるというものです。
 具体的にいつまで無償での居住ができるかは,法律で細かく規定されていますが,例えば,遺言で建物を生存配偶者以外の相続人に相続させる,或いは第三者に遺贈するとされている場合,当該建物を取得する者は,いつでも配偶者短期居住権の消滅を申し入れることができ(民法1037条3項),その申入れをした日から6か月を経過するまで,無償で居住をすることができます(民法1037条1項2号)。

 この配偶者短期居住権は,いかに被相続人がこれとは異なる意思を表示していたとしても,強行法規的に認められる権利です。
 次回は,同じく配偶者の居住権を保護する制度として,長期の配偶者居住権についてご説明したいと思います。