columnコラム

相続

相続法改正 遺言制度⑤

弁護士 長島功

今回は,平成30年相続法改正を踏まえて,遺言執行者の「権限」に関して,ご説明していこうと思います。

1 特定遺贈について
 特定の財産を遺贈するという内容の遺言がなされた場合,その遺贈の履行 は,遺言執行者がいれば,遺言執行者のみが行えることが明記されました(民法1012条2項。以下,「民法」は省略します)。
 ですので,仮に遺贈の履行がされない場合は,財産を譲り受ける人(「受遺者」といいます)は,遺言執行者に対して(遺言執行者がいなければ相続人に対して),遺言に従って履行するように請求することになります。

2 特定財産承継遺言
 特定財産承継遺言とは,「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言」(1014条2項)とされています。法律上は難しい表現になっていますが,遺言で特定の財産を「●●(相続人の誰か)に相続させる」とされていれば,この特定財産承継遺言になります。
 この特定財産承継遺言について,今回の改正で遺言執行者の権限が大きく変わりましたので,以下ご説明します。


(1)不動産について
 従前は,「●●に(特定の)不動産を相続させる」という遺言があっても,遺言執行者は,相続登記の申請をすることができず,この場合は,相続人が登記することになっていました。ただ,実際上は登記がなされないことも多く,その結果,登記上,所有者不明の不動産が多く存在することになってしまいました。
 そこで,今回の改正により,遺言の執行に責任を負う遺言執行者も相続登記の申請ができることとされました(1014条2項)。今回の改正により,相続登記の申請が放置される事態は少なくなると思われます。
 また,これは別の機会に詳しくお話しますが,今回の改正でこの相続登記をしていないと,第三者に相続による取得を対抗できなくなるケースもあるので,注意が必要です(899条の2第1項)。

(2)預貯金債権
 遺言執行者に預貯金の払戻請求権限があるかについては,最高裁裁判所の判例はなく,下級審の判断も分かれている状況でした。
 ただ,この度の改正で預貯金の払戻請求,預貯金に係る契約の解約申入れ権限が遺言執行者に認められることになりました(1014条3項)。
 これまでも,各金融機関では遺言執行者からの払戻請求等を認めるところもありましたが,共同相続人全員の同意を要求されるケースもあり,取り扱いが区々でした。
 今回の改正がなされたことで,預貯金債権についても遺言執行者の権限が明確にされましたので,遺言執行者からの解約申入れ等は,今後より一層スムーズになされると思います。