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裁判例 獣医師

獣医療に関する裁判例~猫の出産に関して行った陣痛促進剤の投与が不適切なため死亡に至らしめたとして獣医師に損害賠償責任が認められた事例

 今回は、獣医療に関する裁判例をご紹介します。
 平成9年1月13日大阪地方裁判所判決です。

■事案の概要
 オーナーが、妊娠した猫の出産について獣医師に処置を依頼したところ、獣医師が誤って陣痛促進剤を投与したために猫が死亡したとして、140万円(慰謝料、死亡した猫と胎児の財産的価値、弁護士費用の合計)の支払いを求めて訴訟を提起しました。

■裁判所の判断 
 裁判所の認定によれば、猫の妊娠の経過は順調であったにもかかわらず獣医師が猫にウテロスパンの注射をした直後(1ミリリットルアンプル2本分を20分の間で2回注射)、猫はぐったりした状態になり、注射から25分経過後には心肺停止して死亡しました。

 裁判所は、①ウテロスパンは、人用の薬品であり、猫に対する使用は許されていないこと、②今回投与されたウテスロパンの量は、人の使用適量の2倍であったこと、③ウテロスパンの投与により循環器障害の副作用が生じるおそれがあったこと、④ウテロスパンの注射以外の死亡原因の存在が立証されていないことなどの事情をもとに、猫の死亡とウテロスパンの注射との間に因果関係を認定しました。

 また、裁判所は、獣医師がウテスロパンを動物に使用する際には、動物の健康状態、産歴、胎児の体位、形状、位置及び子宮の状態や、循環器が正常に機能しているか、それに耐えられる生理的機能を有しているかを臨床的に確認する必要があること、過去において異常出産や帝王切開の経験があり(本件の猫は帝王切開による出産歴がありました)、あるいは子宮、胎児や循環器に異常がある場合には、ウテスロパンの投与を避けなければならないことを認め、本件で、獣医師は猫の産道部の触診を行ったのみで、胎児の状態や猫の循環器の機能について検査を行うことなく、ウテロスパン1ミリリットルアンプル2本分を20分の間で漫然と投与したとして、獣医師に過失を認めました。

 そして、猫及び胎児の死亡による損害として70万円、弁護士費用として10万円の損害を認め、合計80万円を支払いを獣医師に命じました。慰謝料が認められなかった理由は、本件のオーナーはブリーダーであり、猫を愛玩動物として飼育していたのではなく、商品として飼育していたためです。

■まとめ
 今回ご紹介した裁判例は、獣医療に関する初期の裁判例です。獣医師の過失の認定の方法や、因果関係の認定方法、損害の考え方について、今でも参考になります。

弁護士法人浜松町アウルス法律事務所